教員に残業代が出ないことについて最近ニュースでも取り上げられていますね…なぜ教員には残業代が出ないのですか?
給与月額4%相当の「教職調整額」を支給する代わりに残業代は支払われないという法律があるからだよ!
どれだけ働いても定額なんですね…
これから先も変わらないのでしょうか?
よし!今回は教員の給料についての法律の解説をしていくね!
教員の今後の働き方改革において鍵になってくるのが給特法です。
2022年になって今まで触れられなかったこの給特法について政府が発言する機会が多くなりました。
「教師のバトン」のハッシュタグによって現場の声が世間に広まったことや働き方に関する2つの裁判によってその実態が明るみになったことが背景にあります。
今回は現中学校教員まめみ(https://twitter.com/syouenezinnsei)が給特法について最新情報をまとめます!
- 給特法の今後について知りたい人
- 教員の働き方に興味のある人
- 給特法に関する裁判について知りたい人
- 給特法の内容
- 教員の働き方の実態
- 2つの「給特法」裁判で得たもの
- 最新の政府の「給特法」に関する発言
教員でない方にも日本教育の実態をして欲しいと思うので興味のある方は読んでください!
「給特法」ってなに?
給特法は、公立の教育職員の給与等に関する特別措置法として1971年に制定、72年に施行されました。
教育職員の勤務の特殊性を考慮して、時間外勤務について労働基準法とは異なる特別ルールを定めたのです!
その根拠となったのは、文部省(現・文部科学省)が66年に実施した「教員勤務状況調査」です。
当時の残業時間は月8時間程度でした。
なので給与月額4%相当の「教職調整額」を支給する代わりに時間外勤務手当および休日勤務手当は支給しないという法律ができたのです。
給特法の内容
・教育職員の勤務態様の特殊性を考慮して、時間外勤務について労働基準法とは異なる特別ルールを定めた法律
・給与月額4%相当の「教職調整額」を支給する代わりに、時間外勤務手当と休日勤務手当が支給されない
・実習、学校行事、職員会議、非常災害などの超勤4項目を除き、教育職員に時間外労働を命じることはできない
ここで問題なのは給特法が制定された当時の状況とは全く異なる現代において適用されているということです。
精神疾患で休職する教職員は年間約5000人程度います。
長時間労働が一因とみられ、実際は月80時間の過労死ラインを超える働き方をしている教員は大勢いるのです。
5年目教員の私は、教職調整額は月額1万円以内です。残業60時間の月でさえ1万円以内です。
この異常な労働環境が教員の働き方を悪化させています。
この現状は変わるのか?昨今のニュースを取り上げながら解説していきます٩( ‘ω’ )و
2つの「給特法」裁判で得たもの
給特法に関わる2つの裁判が2022年に行われました。
1つは6月28日に判決が下った大阪府立高校教員・西本武史さんの長時間労働をめぐる訴訟。
もう1つは、8月25日に控訴審(東京高裁)棄却によって判決が下った埼玉県公立小学校教員の残業代訴訟、田中まさおさん(仮名)の裁判です。
原告が過重な業務負担により適応障害を発症して2度にわたり休職した。これに対し学校側が適切な軽減措置を取るのを怠ったとして、大阪府(被告)に損害賠償を請求。大阪地方裁判所もこの訴えを認め、被告に損害賠償を命じた。
裁判で被告側は、長時間労働は校長による指示ではなく、原告による自発的行為と主張。校長は原告に対して退勤の促しや体調を心配する声かけを行っており、校長としての注意義務を果たしていたというものだが、判決はこれを全面否定した。
この裁判では適応障害についての損害賠償は認められましたが、長時間労働については自発的行為として判断されました。
続いては、埼玉県公立小学校教員の裁判内容です!
【田中さん(仮名)の訴訟内容】
❶超勤4項目以外の業務は教師が勝手に行っている自発的行為ではなく労働時間に該当する業務であり、労働基準法上の法定労働時間(1日8時間、週40時間)の上限を超えた労働時間は労基法違反であることを認めるべき。
❷長時間労働が労働時間として認められるのであれば、超過勤務手当を支払うか、タダ働き分に対する損害賠償を認めるべき。
【さいたま地裁の一審判決(控訴は棄却)】
❶長時間労働は自発的行為ではなく労働時間であり、377時間23分相当の労働があったと認めた。
❷授業が入っていない空きコマや、子どもたちの下校時間と就業時間との間などは「働いていない時間」として労働時間から差し引き、正味の労働時間は32時間57分であり補償に値しないとした。
埼玉県の裁判で教員に衝撃を与えた内容は、「空きコマや子供たちが学校にいない時間は働いていない時間」と判決が下ったことです。
授業ではない時間は「働いていない」と判断されたんですね…
実際の現場はどうなんですか?
私は中学校教員ですが正直トイレに行く時間や歯磨きをする昼休みもないのが現状だなぁ。授業は仕事内容の3割くらいの感覚だよ。
数少ない空きコマで学級全員分の日記を見たり、教科の課題を点検したり、校務分掌の仕事を進めたり…。
テスト作成や通知表、教材研究、行事の準備など数え切れないほどの業務を同時進行でこなしていきます。
それが「働いていない時間」として扱われるという日本教育の現状を突きつけられた瞬間でした。
これらすべてが「自主的に」やっているいわば「趣味」や「ボランティア」の扱いとなったのです。
しかし、これらの判決が下ったことで得たものがあります。
教職員の働き方の実態が明るみになり、様々なニュースで取り上げられたり専門家や芸能人が教員の働き方改革について発言したりと話題になる機会が増えたことです。
今まで教員の善意によって成り立っていた日本教育。
学校だけ世間とはかけ離れた労働環境で運営されてきました。
これらの裁判は世論を味方につけたことで給特法を変える力となると思います。
【最新】岸田首相の発言から見る「給特法」
ここでは岸田首相の2022年の発言をもとにこれからの「給特法」の改正について考えていきます!
まずは教員の労働環境についての自民党の公約はこちらです٩( ‘ω’ )و
教員の魅力向上といえば「#教師のバトン」が有名になりました。
魅力ではなく学校現場の現状や悲鳴が明るみになるきっかけとなりました。
ここで課題なのは「勤務実態調査」の結果を踏まえるという部分です。
この調査もあえて夏休み期間に行なっている自治体や行事と重ならないように実施している時があるので本当の数値とは言い難いです。
また、「持ち帰り業務」や「休日の部活動」の時間が入っていないので正確さに欠けます。
さらに「検討を進める」というお決まりの文句も課題です。
日本の政治は「検討」という言葉で逃げて「実行」までに時間がかかりすぎるのが課題なので早急な対策はしない方針だということがうかがえます。
そんな中、岸田首相が2022年10月3日の第210回臨時国会でこのような内容を述べました。
岸田首相は「日本を守り、未来を切り拓く覚悟を新たにする」と強調し、成長のための投資と改革の一つとして、「処遇見直しを通じた教職員の質の向上に取り組む」と明言。
教員採用倍率の低下といった学校教育の課題に対処するため、長時間労働など教員の労働環境の改善に意欲を示したとして、メディアでは取り上げられました。
自民党の意図に反した「#教師のバトン」でしたが教員が団結して働き方改革を進めようと動くきっかけとなったのは事実です。
【最新】永岡文科相の発言から見る「給特法」
2022年9月29日に永岡桂子文科相は都道府県と政令市の教育長を集めた会議をオンラインで開きました。
その中で各自治体に要請した内容がこちらです!
- 教員採用選考試験の早期化や複線化を具体化させるため、文科省と教委などによる協議会をできるだけ早く立ち上げる。
- 正規教員を計画的に採用していくため、各教委の中期的な採用計画に、正規教員の割合を定める目標値を各自治体で設定する。
教職員の人数確保のための案としては採用試験の時期をずらすことを第一としています。
働き方改革については「検討」の姿勢を崩していません。
給特法については「(今年度実施している)勤務実態調査の結果を踏まえ、給特法などの法制的な枠組みを含めた処遇の在り方を検討する」としています。
まとめ
教員の働き方改革や給特法については裁判やSNSのおかげでここ数年で初めて多くのメディアに取り上げられるようになりました。
これによって政府による教員の働き方に関する発言回数も増えてきました。
やっと政府が重い腰を上げようとしているので数年ほどで少しは改善するのではないかと予想できます。
「給特法」については改正案は出ていませんが、改正に向けた検討が始まったので来たるべき時に備えて今辞めるのはもったいないかもしれません。
私個人としては①業務削減②残業代支給で教師の魅力は向上すると思っています。それで全て解決するのですが日本には教育にかけるお金がないのでボランティア教員に負担がかかっています。
私はこれからも教員の働き方が進むよう発信し続けていきます٩( ‘ω’ )و
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